D-1ビル物語
都市の中の眠れる資産を掘り起こし、
輝かしい都市生活施設として再生しよう!!
これはD-1ビル開発の汗と涙と笑いの物語です。D-1ビルの開発のすべてをお見せします。

もっと詳しく知りたい方はメールで質問して下さい。
Mail:dd@dam-dan.co.jp
序章:ディベロップメントの夢
長い間、再開発や商業施設開発、まちづくりを仕事としてやってきた僕達に数年前、転

が訪れた。それは知人から大川端の食糧ビルディングの開発についての相談を受けたこと

から意外な方向へ動き出した。食糧ビルディングは魅力的な建物だが、規模・構造の問題

から一般の開発業者が手を出さない。ならばこの建物を生き返らせるために僕達がディべ

ロッパーになろう、とプランを練って提案することになった。しかし結果的にはオーナー

である組合の事情であえなく沈没、あの美しい中庭を持った建築は取り壊されることなっ

てしまった。

佐賀町の食糧ビルディング
それ以来、都心の低・未利用建築物を、いつか自分達の力でディベロップメントしてみよ

うという気持ちが強くなり、僕達の前事務所があった左官会館が取り壊されるのを機に事

務所の移転先のディベロップメントに夢中になるも、これもうまく行かずに現在の事務所

に落ち着いてしまった。それでも自力開発への想いは消えず、目を付けたのが競売物件。

競売とは破産してしまった所有者の土地・家屋を裁判所が競争入札により処分する制度。

の制度を使えば建物を比較的安価に手に入れることが出来るが、占有者が居る、改装に

お金がかかるなどの問題がある。それゆえ不動産専門業者以外の一般の人はあまり手を出

さない。しかし、不動産会社の知人の智恵を借り、自ら物件を見て裁判所に通い、競売に

参加することとなった。

第1章:競売に参加ー入札
新聞の競売物件の広告を見て、不動産会社から資料をもらったり、HP上でチェックし、こ

れは良さそうと思う物件は現地を見て、三点セットと呼ばれる資料を裁判所で閲覧して候

補物件を絞り込む。僕の資金力では土地付き建物を買うことは出来ないので借地建物を入

手することに方針を決定する。さあ、 ”入札するぞ ”となると、入札の為の保証金が必

要となる。裁判所より決定された競売物件の最低落札価格の20%を保証金として預け、

入札金額を決定して裁判所に書類を提出する。複数の応札がある場合には一番高い金額を

提示した人が落札出来るのだけれど、他の人よりあまり高過ぎたら損をしてしまうので、

金額決定にはとことん悩んでしまう。神楽坂にあるビルに第1回目の入札、結果は残念な

がら他の人の方が金額が高く落札出来ずに失敗。第2回目は牛込のビルに入札、期待にド

キドキしていると、何と開札前に取り下げとなる、空振り。第3回目は本郷の物件に入札

しようと保証金を振り込んだら、これまた取り下げで試合中止。第4回目は、またまた牛

込のビルに入札するも前回同様に開札前に取り下げ。ああ、ツイていないと目黒不動尊に

お参りし、平成13年9月13日の夕刊の記事を見てから調査を開始し、10月9日両国

のビルに第5回目の入札。今度は取り下げもなく、10月16日午前9時30分裁判所で

の開札に立ち会う。大学の講義室のような殺風景な大部屋でしばらく待っていると、おっ

僕の名前が呼ばれた!当該ビルには占有者が居て、尚かつ地主が契約解除の申し入れをし

ているという条件の為、僕の他に誰も応札者が居ない。エーッ、最低落札価格に上乗せし

た金額で入札したので○○万円損したと悔やんでも仕方なし。落札出来たとことで、あり

がたいと満足するしかない。その晩は祝杯!

ところで応札者が無く、競売が数回流れてしまった前記の問題のある物件に何故入札した

のか?無謀のようだけれど、僕なりによく検討した結果なのです。まず、占有者の問題は

裁判所の資料から立退命令を出してもらえると判断。この判断には不動産業者のI氏、K氏

の貴重なアドバイスが助けとなった。次に地主が契約を解除した問題については、地主さ

んの自宅を直接訪れてお話をし、地主さんの顧問弁護士と会って落札後の賃貸借条件を詰

めて、土地を貸借出来るとの確信を持ったのです。さて、落札すると落札金額からすでに

支払った保証金を差し引いた金額を支払う。さあ、これで自動的に決定と思ったら、誰か

から異議申し立てがあり、裁判所の判断に数週間の時間がかかり待たされ、ようやく翌平

成14年3月になって決定となり、建物の権利を獲得することが出来た。長〜い年月、フ

ーッ、でも、まずはめでたし、めでたし!!
<競売の流れ>

第2章:ビル占有者の立退きークリアランス
落札したビルには5〜6階及び3〜4階に、このビルの前所有者一家と彼の父親の2家族

が住み、2階にはちょっと怖いその筋の人、そして1階はその関係のラーメン屋が営業し

ていた。落札し権利が移行してすぐに彼等の立退命令書を裁判所に申請する。立退命令が

出る間に地主さんに前所有者の地代滞納分の金額と契約金を支払い、土地の賃貸借契約を

結ぶ。これでビルの権利は完全に入手出来たが、さてクリアランスがうまく行くかどうか

だ。裁判所からの立退命令書は占有者の氏名の確定が出来ない、または、その筋の会社が

登記されていないなどの事実が明らかになり、そうスンナリとはもらえなかった。そこで

また努力です。占有者の調査をし、書類を数回にわたり提出する。こうして多少の右余曲

折はあったが苦労のかいあって裁判所より立退命令書が下りた。ここからはもう僕達の手

におえないのでKさんに依頼し、立退き交渉をしてもらう。Kさんはもの凄く有能で数週間

で話をまとめることに成功。立ち退きは各階それぞれに期限を切り、順次出て行ってもら

う。立退料も払ったが、ごたごたしつつも心配していたよりも円満に立ち退きが実行され

てゆく。5、6階に続き3、4階の立ち退きが実行されそうな情勢になり、まず3〜6階

に放置されたままの荷物の処分をすることに。料金を数社に見積ってもらうと金額180

万円から50万円まで開きがある。これはゴミの処分方法のノウハウがあるかどうかだろ

う。勿論一番安い業者に依頼して実行。その量はトラック10台分程のもの凄さ。立ち退

き後の室内には雑多な物が無秩序にあふれ散乱、悪臭が立ち込める状態。撤去が終わると

ッキリ。あとは1階と2階だが、まだ立ち退かないので次の作業に入る。

第3章:エレベーターの設置工事:コンバージョンの決め手
都内には5〜6階建の低・未利用ビルが無数に存在している。それらに共通しているのは

エレベーターがないこと、ビルのオーナーが最上階に住んでいること、そして不便さ故に

利用されなくなってゆくことだ。
東京では汐留や六本木等の再開発により、オフィス面積

が余って空室率が増加するという2003年問題をきっかけに、コンバージョンという言

葉が流行している。勿論2003年問題は重要ではあるが東京が抱えている低利用ビルの

問題は実は、有史以来はじめて日本が直面した都市の課題なのです。つまり木と紙と土で

作られた一般の建物はその機能を終える時、もとの土に戻るというリサイクルを昔から繰

り返してきたのだけれど、鉄とコンクリートで作られた最近の建物は、当初予定していた

機能が終ってもまだ充分に頑丈な建築物として残ってしまう。その建物を以前のように、

「それでは壊しましょう。」と解体すれば某大なゴミの山が生まれる。まだ充分使える建

物を壊して、某大なゴミを出し、その上貴重な地球の資源を使ってまた同じような建物を

建てる。こんな馬鹿なことを繰り返していいのか。まだ使えるビルを再利用し地域にふさ

わしい建築として建物の寿命を全うさせてあげよう。これが今、都市再生の切り札となる

べきコンバージョンの考え方です。東京の中小ビルのコンバージョンを考えた場合、個別

のビルをうまく再生出来るかどうかの決め手となる一つはエレベーターを設置出来るかど

うかということ。今の時代に合わせてエレベーターを設置出来れば殆どのビルは快適な建

物へ生まれ変わることができる。両国のこのビルもその典型的な例であり、入札する前に

現場に何回か足を運び、比較的簡単な工事でエレベーターを設置出来るとの確信を持った。

そこでいよいよエレベーターを5階まで設置することにして墨田区役所に確認申請を提出

する。以前の建築確認申請図と竣工検査済証が無かった為、大変苦労したが入手できた図

面をもとに設計図書を作成し、なんとか区役所の審査をクリアーし、工事を着工する。エ

レベーター工事は、エレベーター本体はエレベータ−製造会社に、周辺の建築工事は建設

会社に別々に発
注する。この分離発注は両者の工事範囲や工程の調整作業が必要だが、コ

ストが安くなるメリットがある。両者に発注し工事に着手してもらう。同時に1、2階の

人々に退去してもらうのだが、2階の住人にビビッて工事業者が工事を中断するハプニン

グも。工事業者は知人から紹介され初めてのおつき合いだったが、途中からミスが多く出

て、現場は混乱。現場監督不在で僕達が直接下請業者に指示しなければならないような恐

ろしい状態となり、危倶していたように工事は大幅に遅れてしまった。それでもなんとか

区役所の完了検査を受けて工事は終了。はじめは内装も依頼するつもりだったがとても無

理とあきらめて、他の業者に5〜6階の内装解体と塗装等の最小限の工事を発注する。夏

の猛暑の中、このプロジェクトの責任を取る気持ちから5〜6階に竹居が転居。工事現場

のような状況のうちに住み始める。でもこれは覚悟のうえ、もともと自分の家は自分で作

るつもりなのです。でも、水も出ない状態で住む事になろうとは思わなかったが、
工事ミ

スでやむなし。
水も出ない5・6Fに強行移住。バケツ給水。

近所の名刹妙見山の住職にお払いをしてもらう。コンクリートやりっぱなしに掛けられた

まんだらが美しく、お払いの声と仏具を打つ音がすがすがしく響く。まずは、ひとつの区

切り。工事発注前にディベロップメントの計画書を作成し、銀行に融資を依頼する。事業

的に安全な計画であるので絶対の自信を持っていたが、ナント借地に建つビルには金を貸

さないという。一行の担当者は計画を理解して本部に上げてくれたが結局はダメ。まあ、

僕達が無知だったともいえるのだが、「それは無理だよ」と忠告してくれた人達の言葉通

りの結果となった。今の世の中、ちぢみ指向で元気がないね!なんて理不尽な!と思いつ

つ計画を進めるがこれから先、金の手当に苦労することになる。


第4章:3・4階を賃貸住宅とする。
エレベーターを設置し、最低限の工事を終えた後に、本格的にコンバージョンに着手する。

まずはこのビルの用途を決定しなければならない。日本では一般的にコンバージョンと言

うと、供給過剰なオフィスビルを都心居住の需要に合わせてマンションとすることを指す。

しかし、僕達は、その方法はとらない。何故なら、これでは需給(時代)に合わせて採算

性の
良いビルとすることは出来るが、まちにとっては何らプラスに働かないからだ。人が

活き活きと生活する都市にはオフィス、あるいは住宅という単一機能のビルよりも、さま

ざまな機能が複合されたビルが求められている。特に両国のような土地ではなおさらのこ

と。街路に面しては店舗があり、夜も明るく、人々に利便性と治安の良さを提供し、上階

には働く場としてのオフィス、住む場としての住宅があれば、この町の活性化に貢献出来

るはずだ。ミックスドユースのビルにより、崩壊しつつあるコミュニティを再生する。そ

してサスティナブルなまちづくりの一端を担うこと。これがD-1ビルの重要なテーマだ。

不動産屋さんは、”すべて住宅にした方が借り手も多く、効率もいいですよ”とささやく。

でも、僕達にとって、このビルのあるべき姿を提供できるならそれがベスト。まずは3,4

階を賃貸住宅とする工事を発注する。
どんな賃貸住宅とするか。もちろん採算性は重要だ

が、坪当りいくらという不動産価値はあまり信用し

ていない。まず第一に、自分達が住みたい環境を作

ること。そうすれば人はこの部屋に住みたいと思っ

てくれるに違いないと楽天的に考えて、ダムダンの

若手建築家による設計が始まる。3,4階に合計3戸と

いう効率の良さと共に、好環境を実現する為に、1

戸はメゾネットとする。既存の天井を取外し、コン

クリート打放しの天井高の高い空間を作り出す。快

適な部屋をローコストで実現する為に、壁や天井、

設備も使えるものは選別して再利用する。賃貸住宅

の定番である白色の壁・天井に把われることなく自
コンバージョンの方針
達が好む色彩豊かなデザインとする。便器や洗面器等の設備機器は毎日使うものだから機

能とデザインに配慮する。施工した業者の社長が「賃貸住宅では考えられない」という3

戸が、このようにして出来上がった。ローコストと言ってもそれなりに改修費用もかかっ

たし、僕達が住みたいと思う部屋だから借り手も居るはずと考え、家賃は周辺の相場より

少し高めに設定して旧知の不動産屋さんにテナント募集をお願いした。募集を開始して2

週間程が経過すると、さすがに僕にも弱気の虫が出てきて、"勝手にやりすぎてヤバかっ

たかな"と思ったりしたが、すぐに第1の貸り手が決定してホッ。すると次々とまたたく

間に3戸の貸り手が決定。やはり考え方は間違っていなかったと胸をなでおろしたのでし

た。

3・4階の賃貸住宅部分

第5章:ファサードを整える
3.4階の内装工事と同時にファサードの改装工事にとりかかる。建築後20年近く経ったビ

ルには汚れや痛みがある。その外装を補修し、きれいにすると共に、まちにとってふさわ

しいファサードを整えたい。ここは両国、かつて江戸の下町として人々で賑わった場所だ
から、せめてその歴史を感じさせる色を使いたいと考えて、

外壁の一部を"紅"とする。一般的にはピンクと言われるか

も知れないが、僕達は江戸の粋"紅のまち"を作りたいと考

えて、ビルの1階から3階までを紅色に染めた。ビルのイメ

ージが変わると同時にまちも華や
いでくる。余談だがその

後、近所のビルがD-1ビルとほとんど同じ色に外壁を塗り

直して、感じのいいマンションに生まれ替わった。そう、

こういう風に少しづつだけれどまちが変わっていってくれ

ると嬉しい。ローコストであげる為にあまり大した事は出

来なかったが、汚れを落とし、いたみを直し、外壁を塗り

替え、手摺を取り替え、新しいイメージのビルファサード
が整えられた。あとはビルの緑化、まず手始めに入口や階段、バルコニー、屋上などにプ

ランターを設置して緑のある環境づくりに踏み出す。屋上緑化が大きなテーマだがこれは

後述。

第6章 1階は店舗、2階はオフィス
3,4階の入居者が決定し、外装工事も終了したので次は1,2階のテナント募集に取りかかる。

1階はどうしても店舗として、まちの賑わいに貢献したい。シュークリームやケーキなどの

食料品店か花屋がいいなぁと考えて数件当ってみるがうまく行かない。前面道路は4車線

の蔵前橋通りで車輌交通量は多いのだが、歩行者の通行量が少ない。

日頃の商業施設開発業務においては大風呂敷を広げて、人口3万人弱のまちにシネコンを

誘致したりと大胆なことをやっているのだけれど、このビルではモノの小ささにちょっと

遠慮してしまったかな。どちらにしても、僕達からの誘致がうまく行かなくなってきた時、

数件の入居希望者が現れる。業種としてはそれぞれにおもしろ味はあって、だいぶ迷った

けれど人物優先で考え、業種としては最もあたり前ならーめん屋に落ち着く。チェーンの

らーめん屋の店長を勤めている人で、これから自分でこうと思っているらーめん屋を開き、

将来は数店のチェーン店を出したいと熱心に語る。こういう話に弱いんですよ、僕は。賃

貸借契約を結ぶと早速内装工事が始まる。この店舗は僕達の設計ではない。

大規模商業施設の開発では、各店舗のイメージ管理をしている僕達も、この店のデザイン

にはノータッチ。立ち場が違うので入居者にまかせ、ファサードについての多少の希望を

述べるに止めた。こうして2003年夏、1階のらーめん屋"旨麺 こむぎや"が誕生した。

ここのらーめんと水餃子はうまい。僕もらーめんは大好きで色々と食べ歩くのだけれど、

近頃はやりのラーメン屋は味がちょっと"塩い"と思っている。しかしここのスープは絶妙。

D-1ビルを訪れる友人達にも好評なので、一度食べてみたらいかがですか。おすすめしま

す。1階が店舗になると、期待していたように、まちの通りに活気が出て夜も明るく、活

き活きしたまちらしくなる。周辺の人々も喜んでいるようだ。全国どこの商店街も衰退の

坂道をころがり落ちていて、ここ両国の商店街も同様に元気がない。小さな店が1つ出来、

商店街の会員が1店舗増え、ほんの少しだけれど前進。
さて、2階。これはずいぶん悩んだ。不動産屋は住居がいいとすすめるけ

ど、僕は絶対にオフィスにしたい。NPOの人にちょっと当ったがうまく行

かない。1階のらーめん屋さんが将来は借りたいと言うが、その話を待っ

ているわけにもいかない。いっそ、この地区のことを考える場として"両

国倶楽部"としようと考え、友人のデザイナーに頼んでロゴタイプも作っ

てもらう。そうこうしているうちに、是非借りたいという人が現れる。

学習塾をやりたいと言う。それも少人数制の、その子供に合った教え方

で、人と人とのコミュニケーションを大切にした塾を。そして殺し文句

は「このビルの色が気に入ったんですよ。」ああ、もう駄目。こうして

2階は学習塾に決定し、内装工事を終えて2004年1月22日開校予定。

第7章:住まいは自分で造る
僕達は建築家として、日頃は建築の設計だけをして、実際に建物を建てる工事は建設会社

がする。でも、自分の住まいぐらいは自分で造りたい。住まい全部でなく、たとえ部分的

にしても自分の手で出来る範囲は自分で作りたいと思っている。まだ30才を少し過ぎた頃

は体力と馬力にまかせて、無謀にも家を1軒自分で建てた。自分でといっても勿論ただ1

人でという訳ではなく、友人の協力と一部職人さんに手伝ってもらい構造体から床、壁、

天井、屋根、窓といわばシロウトの僕達の手ですべて作り上げた。20坪に満たない小さ

な家だったが、高い天井と、作りながら急きょ設計変更して設けた天窓や窓が気持ちよい

空間を作り出し、大いに満足したものだ。世界中の民家を見て歩いていつも思うのだが、

その土地の材料を使いその土地にふさわしい形態で、住む人々によって作られた家は何と

力強く美しいのだろう。そんなこともあって、自分の住まいは出来るだけ自分で作ろうと

思う。ビルの5.6階を住まいとしてから、工事は延々と続けられ、未だ完成はしていない。

やりたい事とやらなければならない事が次々に出てきて、そのうち家族構成まで変わって、

いつ終わるかもわからないが、それを楽しんでいる。5.6階の吹抜け部分には2層のデッキ
床)を作った。使いなれたツーバイフォーの木材を

カットし、組み立て、6階から出入りする櫓が出来上

がった。下の段にはピアノをセットし、音楽のフロ

アーとし、上の段には僕が世界中から集めたお面など

を飾って、お酒と語らいのフロアとした。手摺が無く

て高所恐怖症の人は上がれないが、僕や友人はゆった

りと楽しんでいる。これは内緒の話しだけれど、この

デッキを一般的な床と考えると建築基準法違反、つま

りこういう所には手摺を設けなければいけないことに

なっている。でも自分で作って自分で使う時は、床か

らの高さ1m10cmの手摺が必要とはどう考えても思えな
いので、お目こぼしをしてもらうことに勝手に決定。建築基準法って他人に迷惑がかから

なければ、個人が自ら作り住まう住宅に厳密に適用する必要はないと思っている。

リビングやキッチンは、既存の壁や天井のボードをはがし、白一色に塗装した。こうする

ことで、天井の高い体積の大きな空間を手に入れることが出来る。

便所の床はモルタルを塗り、友人がバリ島から持って来てくれた青色の小石をはめ込み、

壁はボードをはがしてインドネシアのバンブーマットを貼り付け、天井には和紙を貼る。

こうしてアジアの国を感じる便所が完成。

寝室の床は既存のカーペットをはがしてコルクタイルを貼り、壁、天井には和紙を貼る。

そしてその上に、友人が家の裏の竹やぶから切り出してくれた竹をさいて取り付ける。

宇宙遊泳と名付けた、竹が和空間に浮遊する部屋の出来上りだ。コルクも和紙も竹も自然

素材で、湿度や気温に反応して呼吸するようで快い。
浴室はちょっと大変な工事となった。床はモルタルにビー

玉を埋め込む。壁、天井は、既存の材料をはがし、金網を

貼りモルタルを塗り、自由な曲面とする。部分的に盛り上

げたり、えぐったり、照明を埋め込んだりと、大いに楽し

みながら作る。こういう作業は、事前にスケッチするのだ

けれど、作りながらどんどん変わってゆくところがおもし

ろい。その場その場でいろいろなアイデア
が湧いてくる。

これらの作業には友人も参加し、その人なりのコテ使いで

壁の表情も異なり、これはブラッドリーウォールだなと名

付けて楽しむ。
こうして自分にとって快適な、自分のライフスタイルに合った空間を、体力と時間は使う

けれど極めてローコストで手に入れることが出来る。セルフビルドのおもしろさと難点は、

デザインする人と作る人が同じということ。既製概念にとらわれることがなく自由に空間

が作られてゆくのだが、キリがない。つまり、いつまでたっても終わらない。今も壁をこ

うしようとスケッチをし、材料をそろえている最中。まぁ
あと数年は楽しめるだろう。

第8章 屋上を原っぱにする。
ビルの緑化はD-1ビルの大きな課題だ。入口や階段、バルコニーなどの各所にプランター

を置き、緑豊かな空間づくりを心掛けているが、屋上緑化は都市の狭小敷地に建つビルに

とって非常に興味深いテーマと言える。

墨田区では屋上緑化を推進しており、ある日、屋上緑化についてのセミナーが行われた。

ヒートアイランド現象の抑制をかねて、D-1ビルの屋上を緑の芝生にでもしょうかと考え

てこのセミナーに参加した僕は、そこで考えをガラリと変えられることになる。東京農業

大学の牧 恒雄先生の話は凄い。自然の少ない都市の屋上を緑化して、失われた生態を取

り戻す。それには農業の技術が必要と言う。春には「どの家先にもパンジー」などと単に

草花をめでるために緑化するのではなく、そこに蝶や虫が飛んで来て、自然な生の営みが

戻ってくるような、原っぱにすべきだとのこと。僕は頭をガーンとなぐられたような気が

して、その場でよし、原っぱにしよう!と決心した。屋上を原っぱにという内容について



        屋上空間研究会
http://www.okujyou-kuukan.net/


が詳しいのでアクセスしてみて下さい。

当初考えていたデッキに芝生の案を破棄して、屋上を原っぱとするスケッチを作成し、屋

上空間研究会の会員でもある入交産業株式会社に相談する。原っぱをどのように作るかと

いう内容については両者の意見は一致したのだが、担当者は、もう秋となった時期は施工

に適さないので春まで待って欲しいと言う。僕は、大規模建築ならそれも一理あるが、個

人の建物ではそうしようと思った時に出来なければチャンスを逃してしまう、是非なんと

かして欲しい、いや、なんとかすべきだと強引に秋の終わりの施工を主張する。頭をかか

えた担当者は専門家の知恵を借りてそれでもなんとか施工する方法を探し出してくれた。

こうして2003年10月末に屋上緑化工事は完成した。そして2004年1月、土の上

にかぶせた保護シートの間から緑の葉が勢いよく飛び出し、春を前に緑の原っぱを予感さ

せる風景が現れている。春には見事な原っぱが出来上がり、都市に自然を取り戻す一助に

なることを期待している。
屋上緑化工事
施工前
オクフチ設置
耐根フィルム敷き
排水層・保水マット敷き
軽量土敷き均し
養生シートと原生マット
完 成

第9章:只今準備中

D-1ビル関連記事
雑 誌
ダカーポ NO.515
2003年6月4日発行 GO
新 聞
全国賃貸住宅新聞 NO.572
2003年7月7日発行 GO
ニュース
北海道開発局 まちづくりメールニュース 50号
15.9.30 GO

=続 く=


テナント満室御礼

D-1ビルのテナントはすべて決定しました。



1Fが店舗、2Fがオフィス、3・4Fが賃貸住居となっています。

テナント条件等についての詳細は(株)ウィルプランニング(担当:安谷屋様)に、

お問い合わせ下さい。

TEL:03―5779―6144