ニュース 北海道開発局「まちづくりメールニュース」

15.9.30

50号
中古ビル再生とリデュース(廃棄物の発生抑制)

 
0月は、都市緑化月間でもあるし住宅月間、そして3R推進月間でもある。3Rと

いうのは、“リデュース”、“リユース”、“リサイクル”のことで、ごみを減らし再

生資源の利用と循環を推進する月間。建設業由来のごみを重さで比べるとコンクリート

塊がかなりの部分を占めるという。建物の構造的な寿命は十分残っているのに、間取り

や機能などが古くなったため、取り壊されてしまうことがコンクリート塊を増やす一因。

このような状況を踏まえ、国土交通省も建物の長寿命化について様々な取組を行ってい

る。
 
 先日、それらの取組を先取りするような興味深い建物を見学した。従来型の感覚だと

取り壊されそうな建物を斬新なアイディアで“おしゃれな賃貸マンション”へと再生中。

「建物の寿命をまっとうさせてあげたいという慈しみです。」という新オーナーの言葉

が心に染みた。新オーナーというのは、建築設計事務所を経営する竹居 正武氏。竹居

氏が競売物件を買い取り、そこに移り住み時間をじっくりかけての改修。改修という過

程を楽
しんでいる様にも見えた。競売に出されていたその建物は、両国国技館に近い場

所で築17年、建坪が約21坪、6階建ての小さなビル。難点はエレベータが無かった

こと。

 6階建てでエレベータが無かった理由というのはこうだ。1〜4階は他人に貸して5

〜6階は建て主が自宅として使う。自宅なので、金のかかるエレベータは付けていなか

った。「東京は、こんな建物が多いのです。オーナーが高齢化して(エレベータが無い

ため)今、みんな困っています。」と竹居氏の話。
 
 狭い敷地に目一杯の建物。増築をせずにエレベータを組み込めるか否かが買うべきか

どうかの大きなカギだった。裁判所の開示資料は、簡単な間取り図と外観写真のみ。内

部の事前調査ができず、外から眺めるだけで判断するのは大きなカケ。「競売の開示資

料が外国のようにもっと詳しければいいですけどね。」穏やかに話していただけたのは、

無事エレベータ工事が完成していたからだろう。
 
 エレベータが付いてから竹居氏は、メゾネットタイプの最上階に引っ越した。下階の

改修は、住みながらの工事。内装を取り外し構造体だけになった建物を何度も眺めて、

アイディアを練っていた竹居氏の姿が思い浮かぶ。改修工事は専門業者や職人に頼む部

分がほとんどだが、竹居氏自身や仲間の手づくり部分も少なくない。玄関のたたきに埋

め込まれたカラフルなガラス玉を見て、さも有りなんと納得。
 
 付加価値が付いておしゃれに再生されつつあるこの建物が気に入り、不動産屋は“デ

ザイナーズ・ハウス”と銘打ち、相場より高目の家賃を設定したそうだ。改修工事に携

わった職人が「自分が借りたい。」と言ったくらいだから、すんなり借り手も決まった

らしい。

 「都市の中で眠っている資産を掘り起こして、輝かしい都市生活施設として再生させ

  たい。」竹居氏の言葉が頼もしい。                         

(須藤 光幸)